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【インドに行ってきた】バラナシ1日目-インドの洗礼編-

 

「いつ降りればいいんだ!?」

それが一番の問題だった。

 

2Cの寝台列車は思った以上に快適で、3時に乗ってから昼前まで不快な思いをすることなく寝ることができた。食に関しても、クッキーやチョコレートなどの安全なモノを持ち込んでいたので問題はなかった。

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順調に電車は進んでいく。

 

唯一の問題は、「いつ、どこで降りるか」だった。

インドの電車にはアナウンスがない(あったとしてもヒンドゥー語だったらわからないが)。

何の前触れもなく駅につき、数分停止し、発射ベルもなく静かに出発する。

そして駅名がわからないのだ。

駅の名前が書かれたプレートは、ホームにあるはあるのだが数が少ない。

いちいち周りにいるインド人に聞かなければならなかった。

 

「いつバラナシにつくんだい?」と聞いても、皆の答えはバラバラだ。

「次じゃないかな~?」

「ん~わかんねえや」

「3つぐらい先だよ!」

何かしらの答えを提示してくれるのはありがたいのだが、正確な情報を把握することができない。

インドではありがちなことで、こういう時は駅員や乗務員に聞くのが唯一間違いない情報が得られる手段なのだが、肝心の乗務員が見当たらない。

 

困った。

 

とりあえず、「インドの車窓から」を楽しむことにしよう。

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何かよくわからない。トロッコ?

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線路沿いの民家。田舎の方の家はだいがいこんなかんじ。

 

インドの列車では2つの手段でチャイを買うことができる。

1つ目は、列車の中を歩き回っているチャイ屋。

2つ目は、駅に泊まるとさっと列車に乗り込んでくる、各駅を縄張りとしているチャイ屋。

 

駅に停車した。少し前に聞いたら「次の次だよ」とそのへんのインド人が言ってたからバラナシはまだだろう。

「チャーイ、チャーイ!」

インドおなじみのチャイ屋が来た。小腹が空いたので、チャイを購入する。

濃くて、甘くてうまい!

「ところで、この駅は何駅なの?」

「ここバラナシだよ!」

 

「なんだーまだバラナシかー!ってマジカヨ!」

チャイを吹き出しにそうになった。

嘘だろ!

 

今回の旅で、あれほど慌てたことはなかった。

慌てすぎて、チャイこぼした。

 

ミホさん「あっつ!」

あ、あ~どうしよう…

ダイちゃん「いいから早く出て!」

お、おう。

 

本当に焦ったが、なんとか全員下車することができた。

 

時間は15時ぐらいだ。

クッキーとチョコレートだけしか食べていなかったのでお腹が減っていた。

オートリキシャで、バラナシの川沿いに向かう。

 

久美子の家の隣にある韓国料理屋でほぼ晩飯を食べることにした。

韓国料理屋なので店内は同年代ぐらいの韓国人ばかり。

 

―――

インドでは韓国人をよく見た。

一方で日本人はほとんど見なかった。インドに限らず、韓国人は海外好きなのでどこに行ってもよくいるらしい。確かにほんとどこでもいたなぁ。何回「コリアン?」と声をかけられたことか。

―――

 

食事も終わり、トイレに行こうとしたら「使えない」と言われた。

バラナシのそのあたりの地区は水道がいつでも使えるわけではなく、朝夕2回組み上げた分だけ使えるんだとか。ちょうどその時間は夕方の組み上げの前で水がきれていた。

 

停電はアグラでもあったが、水がないのは初めてだ。

インドではインフラがまだまだ整っていないことを実感する。

 

バラナシでの宿は、ガンジス川沿いに2つある火葬場の大きい方、マニカルカー・ガートの裏にあるゲストハウスだ。

 

どうやって宿に向かおうかと考えながら川をみていると、焚き火をしているおっちゃんに、「ボート、乗らねえか?」と聞かれた。

普通は元の場所に戻ってくる往復のコースだが、片道料金で宿の近くまで連れてってもらうことに。

時間は夕方から夜に差し掛かるところ。日は落ちていた。

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ここはヨーロッパ?と思うほどのボートからの景色。

 

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だんどんと、電気の明るさではない、何かを燃やしている明かりが見えてくる。

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そう、人間を燃やすことによって灯る炎。

 

インド中から死者が運ばれてきて、夜通し火葬が行われているそうだ。

あの三島由紀夫に大きな影響を与えたという、バラナシの火葬場。

いかに特別な場所かということを示すために、その著作の中での描写を引用したおきたい。

屍体は次々と火に委ねられていた。縛めの縄は焼き切れ、赤や白の屍衣は焦げ失せて、突然、黒い腕がもたげられたり、屍体が寝返りを打つかのように、火中に身を反らせたりするのが眺められた。先に焼かれたものから、黒い灰墨の色があらわになった。ものの煮えこぼれるような音が水面に伝わった。焼けにくいのは頭蓋であった。たえず竹竿を携えた穏亡が徘徊していて、体は灰になっても頭ばかり燻る屍の、頭蓋をその竿で突き砕いた。力をこめて突き砕く黒い腕の筋肉は炎に映え、この音は寺院の壁に反響してかつかつとひびいた。(三島由紀夫 豊饒の海 第三巻 「暁の寺」より)

 

裏へ周り宿に向かっていると、何やら大声を出しながら向かってくる集団がいる。

装飾されたタンカみたいなものを4人の男が担いで運んでいる。

その上に乗っている膨らみ。そう、これも死体。

日本ではありえない光景。特に祖父母が4人全員生きている自分にとっては、「死」が身近にない。その膨らみが「死」だっていう実感はわかなかった。

街中を生と死が入り混じる町、バラナシ。インド人にとっても特別な場所なのだろう。

 

宿についた。

チェックインをし、荷物を置いてぶらぶらする。

 

宿のおっちゃんに忠告される。

「火葬場に行くなら、絶対にお金を渡したらだめだぞ。何を言われてもだ」

 

ふむ、合点だ。

 

火葬場の裏手に出た。

眺めていると、何やら勝手に説明しだすお爺さんが現れた。

適当に聞き流していると、「薪代くれ」と言い出す。

 

宿のおっちゃんに言われたとおり。スルーを決め込む。

お爺さんに背を向けて去ろうとすると、お爺さんは言い放った。

 

「Dirty Japanese!」

 

そこまで言わなくても…。確かに、宿のおっちゃんに言われることではなく、薪代を渡すべきか否かは自分たちで判断すべきだと思う。ただ、このおじいさんがどこの誰かがわからない以上、お金を渡すわけにはいかない。何に使われるかがわからない。

 

非難の声を背に、川沿いを歩いて行く。

 

じっとして動かない、骨と皮だけで生きているようなお爺さん。

「ハシシ!(麻薬のこと)」と声をかけてくるおっちゃん。

川沿いにはいろんな人がいる。

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少し歩くと、道が塞がれている。

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バドミントンだ。

川沿いの道いっぱいにネットを張って、おっちゃんがバドミントンをしてるのだ。

しかもかなり本気で。

 

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横で子どももバドミントンをしている。

「ヘイ!やろうよ!」「おうよ!」

言葉が通じなかったり、文化が違ってもできるのがスポーツのすごいところだ。

 

 

川沿いから少し陸側に入ってみる。

薄暗く細い道を抜けると、何やら賑やかな路地に。

 

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バラナシの路地だ。

 

バラナシの路地は魅力的だ。

細い路地が迷路のように張り巡らされている。日本の路地と違うところは、活気があるところ。

日本で路地と聞くと、なんとなく裏通りで人が少ないイメージを持つがインドではそんなことがない。

どこを歩いてても、インド人や旅行者がいる。そしてどこに出るかわからない。だが、突然地元のお店が現れたりして、歩いてて飽きることがない。

 

その時も突然目の前に、お茶屋が。

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お茶はアグラの店で購入したので、ここではチャイを作る際に入れるスパイス、マサラスパイスを購入した(日本語を話せるインド人にのせられて、買ってしまったとも言える)。

 

その後もその辺りをぶらぶらしていると突然停電した。

店番の人は、何事もないかのように平然としている。

この町、地区では停電が当たり前のようだ。

アグラでもあったことだが、やはりインドという異国の地で明かりがない状態というのはなんとなく不安だった。

 

5分ほどすると電気がついたが、時間も遅くなってきたところで宿に帰ることにした。 その日の活動は、それで終わり。

 

 

とはいかなかった。

 

 

宿に帰ったとたん襲い掛かる腹痛。

 

 

うぐっ…。

 

 

しかもただの腹痛ではなく、動けなくなるような腹の奥から来る腹痛だ。

 

長い戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

ダイちゃん「大丈夫~?」

オレ「大丈夫じゃない!」

 

「大丈夫?」と聞かれたら、「大丈夫」と答えるのが心配された時のセオリーだが、が、そんな余裕などない。

 

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結局トイレから1時間出られず、やっと出れた時にはもう何をする体力も残ってなかったのでシャワーも浴びず就寝。

 

この日の活動はこれで終わり。

 

 

ではない。

3時くらいに目が冷めた。

『シャワーを浴びねば…』

 

「カチッ」

電気がつかない…。

 

ということは…。

「シャー」

なんとも冷たい音。お湯も出ない…

 

懐中電灯をそばに置き、真っ暗の中の水シャワー。

 

「あーっ!」

「うっ…」

「おおぅっ…」

 

 

長い戦いは、バラナシの圧勝で終わった。

あな恐ろしや、インドの洗礼…。