【インドに行ってきた】バラナシ2日目-インド人との長い一日-

長い1日だった。

 

6時起床。

数時間前の腹痛と暗闇のシャワーにより体調はあまりよくない。

早く起きてボートで朝日を見に行くことになっていた。

 

マニカルガー・ガートの近くでボートをひっかけ、まだ光のないガンガーへ。

 

朝のガンガーには深い霧がかかっている。10m先も見えない。特に向こう岸側は何も見えなくて、実態の掴むことのできない夢の中に迷い込んだようだった。もがいても、あがいても、手で探っても何もつかむことのできない。そんな夢。

 

一方で岸側は、バラナシに生きている人の朝の営みを見ることができる。

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ものすごく冷たいだろうに、ガンガーの水を浴びている(その時は、5℃あるかないかぐらいの気温)。

寒くはないのだろうか?信仰心がなければ、なかなかやれるものではないと思う。

また、朝のガンガーでは洗濯をしている様子を見ることができた。ガンジス川の水で洗濯物をゆすぎ、岸辺においてある「叩きつける道具」で水分を飛ばす。ここのインド人に餅つきをさせたら粘り気のある美味しい餅ができるだろう。

 

途中、花売りの少女が船に乗り移ってくる。バラナシでは、小船に、ろうそく・花を入れてガンジス川に流す灯籠流しのようなものが行われている。日本にも鐘楼流しなどの行事があるが、同様に先祖の供養として火を灯した小舟を流すそうだ。

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少女がろうそくに日を灯した小舟を渡してくれる。

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流すとゆらゆらとボートから離れていき、10mほどで沈んでしまった。「あっけないものだな」と思いつつ、その沈んでしまうあたりが彼岸と此岸の間のようで不思議な気分。

 

ちなみに、1つ100Rsを要求された。「いい商売だなー」と思いつつ、相手が子どもだというのと、十分に堪能させてもらった感情が素直にお金を払わせた。

 

そして突然、太陽が目の前に出現した。

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霧のせいで対岸の砂山が見えないせいか、何もないところから急に上がってきたように思える。太陽が上がるにつれて霧も一気に晴れ、体に直に伝わる暖かみがある。日の出前後のガンジス川の気温、様子は全く違い、太陽とは実にありがたいものかを実感する。

バラナシほど、夜明けを感じることのできる場所はあるだろうか。街の全てが東向きで、日の出の方向を向いている。太陽の光と、朝のガンガー。

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朝のボートの帰り、やたら馴れ馴れしい若者に出会う。名前はラジャ。「宿の関係者だ。案内するよ。」と言う。「観光地で話しかけてくるインド人は信用できない」とは言うけれど、いちいち疑っていたら楽しみも削がれてしまうので、一旦ついていくことに。最初に朝飯を食べる場所に連れて行ってもらった後、ヒンドゥー教の聖地、黄金寺院ことヴィシュワナート寺院に連れて行ってもらう。

この寺院はシヴァ神を祀る、ヒンドゥー教にとって最も重要な聖地だそうで、非常に警備が厳しい。

当然、写真撮影は禁止。荷物も中に入る前に預けなければならない。入り口近くの商店街の一角にあるロッカーに預けることになったのだが、パスポートやお金など貴重品はすべて肌身離さず持っていたので不安になる。

その不安から、最初は日本から持参した腹巻きに本当に大事なものを身につけて入ろうとしたのだが、セキュリティチェックが厳しすぎて持ち込めず、結局ロッカーに。

 

「ははっ。預けろっていったろ!俺が見てるから大丈夫だよ」とラジャ。

どうしようもないので、すべて預けて中に入る。中は裸足。さすがに牛の糞はないが、衛生的に若干の不安があった。中に入ったあと、さらにセキュリティチェックがあり、いよいよ寺院へ。

 

と、ここでアヤコがカメラなど、諸々の貴重品を持ち込んでるのが見つかった。

なぜか最初のセキュリティをかいくぐれてしまったのだ。

警備員の府警さんも「マジかよ(笑)」といった表情で苦笑している。

この時は中にある警察に預けるだけですんだが、本来何かを持ち込むと逮捕されるらしい。危うく収監されるところだった、アヤコ(笑)。

 

中に入ると、皆必死だ。それと対比的に冷静なのは警備員と猿。特に猿は、聖地などはお構いなしに人が手に持っている供物を狙ってくる。猿にとっては宗教など関係ないのだ。人間がそれをしようものなら、大きな避難を浴びるだろう。「この罰当たりが!」と。

人間は猿よりも弱い生き物なのかと思ってしまう。動物としてだけ生きていくことはできない。自分たちが生きていくために作り上げた"宗教"という概念がなければ生きてはいけない。

 

―――

この旅を通して、宗教に興味を持った。生活と密接に結びつく宗教、街と一体化する宗教、かつて世界の中心だった宗教、今も原理主義者を中心に争いが起きている宗教。

無宗教と呼ばれる日本で生まれた自分にとって、宗教感覚はいまいち理解することができない。信じる神様がいるという感覚がわからないという方が表現の方がいいかもしれない。

そのため、観光目的に宗教遺跡に行ってもほんの一部分しか見れていないと思う。「感じることが大事だ」とはいうけれど、それは長期滞在における話ではないだろうか。短期間、ほんの数日滞在しただけで「感じる」ことなどできないと思う。ある程度の前提知識や感覚的な理解は必要なのだと感じた。

―――

 

その後は、シルク工場に連れていってもらった。機械化された大きな工場を予想していたら、ツルの恩返しに出てきそうな機織り機が出てきてびっくりした。

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デザインから型作り、織るところまでほぼすべての作業を手作業で行なっていた。

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その後は直売所に案内される。他の店で軒先に出ているものを「シルクだよ!」と言われても疑ってしまうが、ここはそれまでに作業工程を見ているので「シルクだよ!」という言葉には説得力があった。

ついついいつもは買わないものまで買ってしまう。各人、ストールなど1~2枚購入。

 

店を出ると「今度は映画館行こうよ!」とラジャ。映画好きで知られるインド人、そして「なぜか踊る」ことで知られるインド映画。有名作品は日本でも見ることができるが、現地で見ることで「本当のインド映画」を見ることができると思い、見に行くことに。

 

少し休んで宿の前で待ち合わせていると、ラジャが友達を連れてやってきた。

「こいつはサニー。親友だよ。」

とラジャと同じくらいの年齢であるらしい男を紹介される。

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彼はカースト最上位であるバラモンの生まれらしく、今は聖職者になるための修行中らしい。

 

映画は総じて面白かった。

「Matru Ki Bijlee Ka Mandola」という映画で、若干政治色の絡んだラブ・コメディといったストーリー。

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(後のムンバイで見かけた同映画の看板)

最初は眠くて仕方がなかったが、最後は「政略結婚をぶっ壊す話」だとわかり楽しめた。

もちろんダンスがことあるごとに挿入され、映画を盛り上げる。突然大声を出したと思うとそれを合図に踊りだすんだもんなあ。

 

以下、映画雑感

・基本的にドタバタで、すぐ場面が切り替わる

・長いので、途中に休憩がある。

・個人的にダンスシーンは好き。特に映画館の音響できくとテンション上がる。

・インドの映画館はマナーにルーズ。携帯はしょっちゅう鳴るし、普通に電話し始める。笑うシーンでは笑うのは当たり前。その方が自然なのかもしれないけどね。

・女優はインド映画界のスターらしい

・悪い婚約者が○関さんに似てた。

 

映画鑑賞後、ラジャが「ガンジス川の対岸でお酒飲もうよ!」と誘ってきた。

個人的には、「夜のインド+お酒+親切だとはいえ目的のわからないインド人」という組み合わせには危険しか感じず迷うところだったが、旅は流れに身を任せたほうが楽しいものだし、第一皆のノリがよかったので、止めずに行くことにした。

一旦宿に帰り、ダイちゃんがサニーとお酒の買い出しに行くというので待つ。

どうしても不安だったので、お酒は飲んでるフリをすることにし常に警戒することにする。

 

マニカルガー・ガートの横で待っていると、ラジャの弟だという少年がボートを漕いでやってきた。

その少年が船を漕ぎ対岸にわたる。

買ってきたカレーと共に乾杯。

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インドの数少ないビール、キング・フィッシャー。

 

その後カレーも食べ終わり落ち着いたら、少年が俺とダイちゃんを砂山探索に連れ出した。「ヘイ!ちょっとあっち見に行かない!?」

 

「あ、なるほどね」と。

彼らは、アヤコとミホさんを口説きたかっただけだった。

暴行されて金品を奪われる等の最悪のケースを想定していた俺は、拍子抜けしてしまった。完全に安心てわけでもないが、しばらくほっておくことにした。

色々案内してもらったのは事実なわけだし、彼らにも面子ってものがあるだろう。

 

少し散歩していると、アヤコがこっちにやってきた。

「なんかすげー口説かれてめんどくさいんだけど…(笑)」

最初の場所に戻ると、ミホさんも「何か口説かれてた(笑)」と。

 

しかし、よく口説こうと思ったものだ。彼女らと俺たちは兄弟とは言ってあったけれど、どこの誰が妹が口説かれるのを許すというのだろうか。

 

彼らは物足りなそうだが、しばらくうだうだして帰りのボートに乗った。

 

そこでミホさんが聞く。

「インドでは、女をお金で買えるの?」

それに対してサニー、

「買える。だけど、自分は外国人にしか興味がない。今までも何回も寝てる」

急に顔つき変わったか気がした。

「あ、こいつはもう口説けそうもないな。」という本音の顔。

「ヤケクソだな、これは」と。

 

ボートから降りてからも「まだ言ってない秘密がある。それを聞くにはもう少し付き合ってくれ」と口説かれていたが、さすがの2人は全く相手にせず宿に帰る。

 

この1日は楽しかった。普通にガイドブックを見ながら街を歩いていては行けないような寺院や現地人だけしかいない映画館に行けた。

ただ、1日案内してくれた彼らにも目的があって、それは「女の子」だった。

インド人の親切を、ただの親切だと思いこむことは危険だと感じた。

「親切にしてくれたと思ったら…」という話はつきものだ。

ただ何もかもを疑っていては、人間不信に陥って、警戒しているだけで旅を終えてしまう。

全部を疑わないまでも、最低限の心構えとして「インド人が話しかけてくる時は、まず「相手が何の目的を持っているか」をしっかりと把握する」ということを意識すべきだと、改めて認識した。