映画感想:『ラ・ラ・ランド』は、あえて言うが「がっかり」だった


La La Land (2016 Movie) Official Trailer – 'Dreamers'


鬼気迫る作品である『セッション』がとても良かったので
「セッションはこの作品(ラ・ラ・ランド)を作るために作った」
というほどの本作はどれだけのものだろうと期待値が高い中での鑑賞。


売れない女優であるミアと自分の店を持つ夢を持ちつつくすぶっているセブのアメリカンドリーム、恋物語。要所に挿入される音楽/ダンスに違和感はなく、ミュージカル映画でありつつ、映画のストーリーも楽しむことができる。本的には「陽」の映画なので、目を背けたくなるようなシーンもなく安心して観ることができる。


各方面で絶賛なのもうなずける。ミュージカルシーンは名作のオマージュがちりばめられている。
雨に唄えば、スイート・チャリティ、バンド・ワゴン、パリの恋人、シェルブールの雨傘。。
ミュージカル映画好きであれば、映画好きであれあるほど、楽しむことができる。
チャゼル監督もそうなのだろう。本作の原案は2010年からあったというのだから、
彼が25歳のときに考えられたものだ。若い時分から考案されていたということからも、彼の思い入れが伝わってくる。


しかし、言葉を選ばずに言えば「がっかり」だった。

期待値が高すぎたということがあるのかもしれない。『セッション』の延長を期待してしまっていたということがあるのかもしれない。ただ、少しストレートすぎて、まぶしすぎて、置いてけぼりにされている気分を感じてしまわざるを得なかった。本作を一番楽しみながら鑑賞することができるのは、古くから業界にいる映画業界の人であろうし、彼らが評価をするのもうなずける。だが、自分が映画に求めていることと少しずれていた、良い悪いではなくそういうことだ。


私が映画に求めていることとして「境界を越える擬似体験」が占める割合は大きい。普段暮らしている、仕事をしている、友人、同僚、家族と話を
している中では得られない感覚/考え/価値観を得ることで、映画鑑賞前にはなかった新しい世界の感覚を得ることを求めている。


だから本作が悪いということではない。エンターテインメントとしては珠玉の出来だと思う。鑑賞している時間は幸福な時間だった。


オスカー受賞のチャゼル監督は自作はどんなものなのだろう。『ラ・ラ・ランド』のようなストレートな人間賛歌の作品か、あるいは狂気性を帯びた芸術の世界『セッション』のような作品か。何にせよ鑑賞したいと思っている。