映画感想:『素晴らしき哉、人生!』はベタだが王道ではない作品
It's A Wonderful Life
素晴らしき哉、人生!
というタイトルだが、その感想を一言で言うと、
It's A Wonderful Movie
素晴らしき哉、映画!
もう70年も前の作品だが、その感動が色褪せることはない。
130分と長い作品であり途中中だるみしていることは否めないのだが、最後のシーンでそのフラストレーションはどこかにいってしまう。中だるみすることもまた人生であり、その中だるみこそ自分の人生を作っていて、そして素晴らしいものだと知る。
主人公ジョージは、なんて幸福な男なのだろう。家族、町の皆に愛されている。お金が潤沢にあるわけではないが、それが大事なのではない。
勧善懲悪という言葉は、誰もが知っている言葉だろう。善事を勧め、悪事を懲らしめる(よくない事とする)ことだ。多くのストーリーで採用される、ストーリーテリングにおける王道的な概念である。
本作は、勧善懲悪のストーリーになっていない。ジョージの行いが善だと言っているわけではないし、町一番の富豪ポッターの行いが悪だとも言っていない。最終的にジョージが大金持ちになるわけではないし、ポッターが懲らしめられるわけではない。
単純に、友が多くいるジョージの人生を礼賛するストーリーになっている。
仮に結末が違ったとしよう。
町の皆の力を結集してポッターを懲らしめる。そしてジョージは大金持ちに。めでたしめでたし。
It's A Wealthy Life.
ではあるものの、Wonderfulかどうかはわからない。
ジョージには多くの友人がいること、それが如何に素晴らしいことか。
実にベタな示唆である。本作の結末はそれでいいのだ。だからこそ名作なのである。
クリスマスの話で4月ではいささか季節外れではあるが、どの時期に見ても多幸感に包まれる作品である。アメリカでは年末にTV放送されるのが定番であるらしい。我が家でも、今年のクリスマス前後に上映したいと思う。