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映画感想:『インファナル・アフェア』はアジア映画最高峰


Infernal Affairs - Official Trailer [HD]

アジア映画というと、ジャーキー・チェンが「アチョー!」と言っていたり、
あるいは「少林サッカー」のやりすぎなCGのイメージだったり、あまり繊細な作品のイメージがなかった。

本作には驚いた。マフィアに潜入する警察官と警察に潜入するマフィアの話で、
設定だけ見ると純粋なエンタメ作品のようだが(実際面白い)、
登場人物の精神面のゆれにも焦点があたっており、一筋縄では語れない繊細な作品にもなっている。


本作『インファナル・アフェア』は香港映画でかり三部作の一作品目だ。
所謂フィルム・ノワール香港ノワール)と呼ばれるジャンルに分類される。
フィルム・ノワールとは、虚無的・悲観的・退廃的な指向性を持つ犯罪映画を指した総称のことである。

潜入捜査官としてマフィアに入り込むヤン(トニー・レオン)と、
そのマフィアから警察に潜入するラウ(アンディ・ラウ)、2人の主人公を中心に話は展開する。

ラウは警察官として順調に出世しており、上層部からも部下からの信頼を得ている。
一方のヤンは、マフィアのボスサムからの信頼を得ているものの、
元々がマフィアの家系でマフィアになりたくなかったこともあり、群れず、一匹狼で孤独だ。


本作の面白さは、設定もさながら、その2人の揺れ動く心情にある。

ヤンは警察官になりたくてもなれなかった(落第した)。
警察官になるためだけに、自分が嫌っていたマフィアの世界に身をおいている。
その心労は当然あり、精神科医に通っている。

ラウは警察官になりたかったわけではないが、順調な出世、周りからの信頼、
マフィアであることがバレるリスクを考え、警察でいることの選択肢を持つようになる。


そんな対照的な彼らの立場が交錯し、最終的に悲劇につながっていく。
ヤンはまだ救われている。そうありたかった警察官として埋葬されたからだ。
まだ2作目、3作目を見ていないが、ラウは救われないのではないだろうか。

善人になりたくてもなれない、また善人になろうとするがために犯罪を起こすという矛盾。
そんな悪い循環にはまってしまうのがラウであり、その自らの運命との戦いが今後描かれるのだろう。
本作冒頭にも出てくる仏教的な無常の考えが元にあり、アジア映画ならではの世界観である。


決して、派手な銃撃や逃走劇等、クリミナルエンタメ作品によくある要素がある映画ではない。
「ボーンシリーズ」のようなスカッとする映画ではなく、本作はむしろ見終わった後に気持ちが重くなる映画だろう。
重厚な香港ルノアールを期待する人、また時間のある人(3作品全て見たくなる)、アジア映画の最高峰を観たい人、そんな人におすすめの映画だ。