映画感想:『20センチュリー・ウーマン』の各シーンを切り取って写真展を開きたい
20th Century Women | Official Trailer HD | A24
素晴らしい作品だった。今のところ、2017年に観た映画でベスト。
稚拙な感想に聞こえてしまうかもしれないが、とにかく「キラキラ」している。ポスター写真の雰囲気そのままだ。
1970年代という女性の社会的な立場の議論が活発だった時代、今よりも社会進出する女性が少なかった時代、そんな時代の3人の女性が生きることの複雑さとその素晴らしさを教えてくれる。
この映画の良さを3つの点から伝えたい。
キャスト
まずキャスティングが素晴らしい。
15歳ジェイミーを演じるのはルーカス・ジェイド・ズマン。子どもらしさも残りつつ、声がわりして声は大人という少年と青年の狭間をうまく演じている。彼のこの一瞬はこの映画にしか残らないだろう。
ジェイミーの母ドロシーを演じるのはアネット・ベニング。自身も4人の母親であるアネット・ベニング。思春期の息子への接し方への葛藤。また自分の考えをしっかり持った大人の女性。1人の人物の2つの表情がうまい。
子宮頸がんと闘病する写真家アビーを演じるのはグレタ・ガーウィグ。赤髪と闘病による物憂げな表情が印象的。
ジュリーを演じるのはエル・ファニング。少し悪いことも覚えて、ただ漠然とした不安もあり、基本的に無愛想。そんな17歳のジュリーを見事に演じている。
かつてヒッピーコミュニティーに属していた大工ウィリアムを演じるのはビリー・クラダップ。知らなかったのだが、トニー賞も受賞した名優。言葉が少ない役柄だが、元ヒッピー中年の悲哀がじんわり伝わってくる。抑えた演技が魅力的だ。
音楽
1970年代のアメリカではロックが流行っていた。当時流行っていた曲をいくつも聞くことができる。
またそれとは違う、要所で流れる爽やかなBGM。カラフルな水玉が弾けるようなメロディーで、彼女たちの生の一瞬一瞬の輝きを感じることができる。
映像
1つ1つのカットに深いこだわりがあるのがすごく伝わってくる。
劇中のどのシーンを切り取っても、写真展が開ける作品にできるようで。
中でも一番好きなのは、ジェイミーがスケボーを使っているシーンだ。
緩やかな坂を、緩やかにスケボーで下るジェイミー。そして、それを少し離れて車で追う母ドロシー。
そして最後ではその2人が重なり…
大成功するという話でもないし、大失敗するという話でもない。
衝撃的な展開がある話でもない。
劇中で描かれている彼女たちの人生の一部は、一部でしかなくハイライトということでもない。
では、なぜここまで魅力的なのか。
それは監督/脚本家の人を見る視点の優しさと繊細さ、それをうまく表現した映画としての出来が素晴らしいからだろう。
色々な感情を抱えている時にまた観よう。そう決めた。