映画感想:『そして父になる』の福山雅治の演技は素晴らしい


映画『そして父になる』予告編

福山雅治の演技へのアンチが多いようなので、それに関しての個人的な感想を。

本作での福山雅治の演技は良かったように思う。
「演技うまい」ということではない。キムタクと同様に、彼もまた何を演じても「福山雅治が演じている」ことがイメージとして先行してくる。

その「福山雅治らしさ」が、エリートビジネスマン野々宮良太のイメージと合致していた。

野々宮は、エリートビジネスマンを一般化したような人物だ。

一流の建築界社につとめる建築家であり、都心のタワーマンションに住んでいる。優秀であるが故に大きな仕事を断続的に任されており、休みの日も仕事、夜家に帰ってからも仕事とワーカホリックな状態だ。一方で息子との時間を全く割いていないわけではなく、仕事と仕事の合間に受験の面接に行ったりと最低限「父親」であろうとしている。

都会のエリートの「型」にはまったような人物で、彼もそんな自分を良しとしている。

そんな「型」にはまったエリート感、ある種の硬さが、福山雅治の「型」と合致している。

例えば、今まで違う家庭(群馬の電気屋で自由)で育った子どもに対して、「これがルールだ」なんて言っちゃうあたりがエリートビジネスマンの人情の希薄さを揶揄しており、それが福山雅治の「硬さ」と合致してとても良い演技だと感じる。


一方のリリー・フランキー。彼の演技というか、本人の元々持った性質(ゆるーーい大人)が、群馬県のどうしようもない、だけど愛情深い家庭の父親の人物像とうまくシンクロしている。


子を持つ人であれば何かしら考えるところがあるテーマ、そして登場人物像に合致するキャスト。是枝監督の特徴とも言える音楽の少ない静かな作品の雰囲気。テーマとキャスト、そして監督の色。とてもストレートで爽やかだからこそ、取り上げているテーマを深刻ではないが真剣に考えられる作品だった。