映画感想:『ショート・ターム』で目線を合わせる


映画『ショート・ターム』特報

こういった施設を舞台とした作品をいくつか観てきた。

古くは『カッコーの巣の上で』が有名だろう。ジャック・ニコルソン演じるマクマーフィーが刑務所から逃れるために精神病院に入院する話だ。彼は精神病患者を特別扱いせず、仲間とした扱った。

最近の作品だと『人生、ここにあり!』だろうか。労働組合員のネッロは正義感が強すぎるあまり精神病院に移動させられてしまう。そこで彼は、精神病患者を率いて床貼りの仕事を始める。

そして本作。問題を抱える18歳までの若者のためのグループホーム「ショート・ターム12」。ブリー・ラーソン演じるグレイスは、その施設のケアマネージャーとして働いている。

3作品に共通する事項とは何だろうか。

それは、どれも「目線」が重要だということだ。

マクマーフィーは、精神病患者を仲間だと考えた。
ネッロは、精神病患者を同僚だと考えた。

グレイスは、ホームの子どもたちと同じ目線で話をしようとする。絵が好きな子どもとは一緒に絵を描き、時には一緒に車を破壊する。それは彼女自身がホームの子どもたちと同じ境遇だったという自然な共感もあり、子どもたちには違和感なく受け入れられている。


私たちは、傷ついた人たちや弱い人たちと接する際に、上から目線になりがちだ。

カッコーの巣の上で』の看護婦長ラチェッドの強権的な姿勢や、『ショート・ターム』のネイト(短期アルバイト?)の自己紹介での言葉「恵まれない子どもたちのために〜」という発言がそれにあたる。

弱っている人に強くなりなさい、と言うのではない。自分が弱っていた時には何を考えたいたかを話そう。
病気の人に頑張れ、と言うのではない。今世の中で何が流行っているかの話をして、少し元の世界に戻してあげよう。


傷ついた人と接する際に、いかに同じ目線でいられるか。
テーマとしては重たいものだが、ラストシーンには救いがあり、重苦しいテーマをポジティブに考えることができる作品である。


そしてブリー・ラーソンの演技が素晴らしい。一見暗そうな雰囲気を纏っているのだが、最終的にはポジティブな彼女。『ルーム』もそうだが、演技とは思えないほど自然体。彼女の今後も楽しみである。