映画感想:『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は最高にロック


"Angry Inch" - Hedwig and the Angry Inch (2001)

ロックを語るということがナンセンスなのかもしれないが、この映画については語らざるを得ない。

元々舞台だったのを映画化したというもので、そのせいか、映像に躍動感がある。画面を通して見ているのだが、目の前で演奏されているかのようで、ライブDVDの映像よりもよっぽどライブ感のある映像。

トーリー自体には大きな起伏があるわけではなく、「彼女の生き様と音楽」それだけの作品である。
だから、ストーリーを楽しみたいという人には、この作品は向かない。

では何を楽しむ、感じる映画なのかというと、「愛」に関する彼女の魂の叫びを音楽から感じる映画である。

彼女は幼少期から愛とは何かを考え、愛を求め続けている。東西分断されている時期のドイツ(東ドイツ)に生まれ(国の分断)、両親は離婚し(家族の分断)、自らは男性でも女性でもない(性の分断)。男性と結婚しアメリカに行くのだが、相手は出て行き、そこでまた何かの分断、すなわち愛の分断に悩まされる。

そんな彼女の厳しい現実からの逃げ道、そして生きることそのものになったのが「音楽」でる。
幼少期から小さい部屋のベッドの上、オーブンの中で音楽に触れ続け、そして自分の感情を音楽に乗せて吐き出すようになる。

その最たる楽曲が、映画の中盤で歌われる『The Origin of Love』である。
※↓を歌っているは、最近までブロードウェイで上映していた『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の舞台でヘドウィグを演じていたニール・パトリック・ハリス。彼はその舞台で、2014年にトニー賞を受賞した。


Hedwig & The Angry Inch | Neil Patrick Harris - The Origin of Love | Official Audio

So we wrapped our arms around each other,
Trying to shove ourselves back together.
We were making love,
Making love.
It was a cold dark evening,
Such a long time ago,
When by the mighty hand of Jove,
It was the sad story
How we became
Lonely two-legged creatures,
It's the story of
The origin of love.

2つ、あるいは3つに分かれていたものをは、元々1つだった。
ただ神々の放った稲妻によってそれは別れ、別々のものになった。
ただ分かれたもの同士、一緒になることができる。それが「愛」。


彼女(いや彼なのか)は、最後に出てくるライブでは、もはや変装をしない。
男性の姿(ヘッドウィッグをつけず)で、上半身裸でのライブ。
ヘドウィグは、「性別」という概念を超え、最高のパフォーマンスを発揮する。

本作は各国でキャストを変えて舞台が上演されている。
普遍的な作品であり、今後も時代を超えて鑑賞される作品になるのだろうと思う。