映画感想:『スポットライト 世紀のスクープ』は「いぶし銀」な報道映画

映画「スポットライト 世紀のスクープ」予告編 スポットライトという言葉が好きだ。 メディアの本質とは、スポットライトであると思っている。日々刻々と時間が過ぎ去る中で、様々なことが起こっている。 それを全て知ることは不可能だし、メディアが全てを…

映画感想:『マンチャスター・バイ・ザ・シ-』とアメちゃん

アカデミー主演男優賞受賞『マンチェスター・バイ・ザ・シー』予告編過去に何かしらの事件があって闇を抱えている人物が、新しい出会いによって救われる。そんな話はたくさんある。多くの作品は、作中の前半の状態から変化するのが普通だ。 幸せだったのが転…

映画感想:『永い言い訳』は必ずしも悪いものではない

映画『永い言い訳』予告編言い訳の本質とは「現実の否定」だと思う。 小さな話で言うと、学校に遅刻したときの言い訳。 よくアニメやドラマ、小説で描かれる場面だが、学生達は遅刻をしたことに対して言い訳をする。 学生「突然の嵐に巻き込まれてびしょ濡れ…

映画感想:『リップヴァンヴィンクルの花嫁』で岩井俊二が切り取る"一瞬"

『リップヴァンウィンクルの花嫁』予告編岩井俊二はフォトグラファー的な映画監督だと思う。"一瞬"を切り取る作品であるように感じる。『リリィ・シュシュのすべて』では、「大人になる前の少年、少女」だ。 インターネットという時代性を絡め、その年代特有…

映画感想:宇宙、女性、黒人のフロンティア=『ドリーム』

映画『ドリーム』予告ASFや本作のような宇宙に関連した映画(本作はScience Non-Fiction)はなぜこうも魅力的なのだろうか。 それは、宇宙が人間にとって、一番未知の領域であるからではないだろうか。 例えば、地球の自然の脅威に関する作品は多く存在する…

映画感想:『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』を観て思考の整理手段を考える

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』予告人は、自らの頭の中では完結することができないほどの思考があふれると、思考を外に出そうとする。 その最たるものが、喜怒哀楽だ。喜怒哀楽の感情が、自分の中で完結できないほど大きなものであると、それが表…

映画感想:『ティパーテッド』とハリウッドリメイクの本質

www.youtube.comハリウッドリメイクとは、アメリカ以外の国で作られた映画をハリウッドの技術、人材、お金を使ってリメイクすることだ。 リメイクの数は減ることがなく『君の名は』まで実写リメイクされるらしい。そして本作は、香港ルノアールの傑作『イン…

映画感想:『ナイトクローラー』と”Post Truth”

映画『ナイトクローラー』予告編“Post Truth”英オクスフォード英語辞典が毎年発表する「その年を象徴する単語」として、2016年に選ばれた言葉だ。定義として、こう書かれている“Relating to or denoting circumstances in which objective facts are less in…

映画感想:『アデル、ブルーは熱い色』は、アデルの半開きの口で全て語れる

アデル、ブルーは熱い色 恋人同士、家族の人間関係って、どう表現したらよいのだろうか。自分は、よく「曲線的なベクトル」をイメージする。一人一人自分の人生のベクトルを持っていて、人と人が関係を持つときに、それが絡み始める。 絡み方は様々だ。つか…

映画感想:『レヴェナント』からポジティブな教訓を導き出してみた

映画「レヴェナント:蘇えりし者」予告1(150秒) アカデミー賞主要3部門受賞これは見事なゾンビ映画。映画タイトルは『レヴェナント(The Revenant)』。直訳すると、帰ってきた人、亡霊、幽霊という意味である。まさにその通りで、レオナルド・ディカプリ…

映画感想:『みかんの丘』で老人達がみかんを作り続ける理由

映画『みかんの丘』『とうもろこしの島』予告編仮に北朝鮮とアメリカが戦争になり、日本が巻き込まれたとして、自分たちはどうすべきなのだろうか。 慌ててミサイルが飛んでこなそうな過疎地域に避難する?それとも国を守るために自衛隊に入隊する? 色々な…

映画感想:詩とは何かを知りたければ『パターソン』を観るべき

『パターソン』本予告 8/26(土)公開普段の生活で詩を読むことはあるだろうか。 小学校、中学校の国語の教科書に載っていて、なんとなく勉強をした人がほとんどではないだろうか。 些細なことをなんでこんな複雑で大げさな表現をするのだろう、そう思ってい…

映画感想:『ショート・ターム』で目線を合わせる

映画『ショート・ターム』特報こういった施設を舞台とした作品をいくつか観てきた。古くは『カッコーの巣の上で』が有名だろう。ジャック・ニコルソン演じるマクマーフィーが刑務所から逃れるために精神病院に入院する話だ。彼は精神病患者を特別扱いせず、…

映画感想:『ニュー・シネマ・パラダイス』は映画好きのための映画

映画「ニュー・シネマ・パラダイス完全オリジナル版」日本版劇場予告 映画好きの映画好きによる映画好きのための映画。タイトルは『ニュー・シネマ・パラダイス(イタリア原題:Nuovo Cinema Pradiso』)』、映画好きのパラダイスのような映画なのだ。 まず音…

映画感想:『イミテーション・ゲーム』はマイノリティのスポットライト

映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』予告編メディアとは本来「媒体」のことである。物事と人をつなげる役割を果たす。ただメディアには、他の側面もある。「光をあてる」ということである。この風刺画を一度は見たことがある人は多…

映画感想:『そして父になる』の福山雅治の演技は素晴らしい

映画『そして父になる』予告編福山雅治の演技へのアンチが多いようなので、それに関しての個人的な感想を。本作での福山雅治の演技は良かったように思う。 「演技うまい」ということではない。キムタクと同様に、彼もまた何を演じても「福山雅治が演じている…

映画感想:『オクジャ』と北海道の猟師から考える食肉

この子は、私の大切な家族。『オクジャ/okja』家族編 (30秒) 韓国出身ポン・ジュノ監督が各映画会社に企画を持ち込み、多くは断られ、NETFLIXのみが賛同。予算50億ドル、内容に関してNetflixは口を出さなかったもので、それゆえに自由に作られた作品になっ…

映画感想:『20センチュリー・ウーマン』の各シーンを切り取って写真展を開きたい

20th Century Women | Official Trailer HD | A24 素晴らしい作品だった。今のところ、2017年に観た映画でベスト。 稚拙な感想に聞こえてしまうかもしれないが、とにかく「キラキラ」している。ポスター写真の雰囲気そのままだ。 1970年代という女性の社会的…

映画感想:『ウルフ・オブ・ウォールストリート』には「理性」という概念が存在しない

『ウルフ・オブ・ウォールストリート』 予告編 欲望。多くの動物が生きるために持っているもので、動物である人間ももちろん持っている。 しかし人間が他の動物と違うのは「理性」があるということだ。 「理性」により人間は高度な文明を築きあげ、大きな力…

映画感想:『マダム・イン・ニューヨーク』は日曜の夜に鑑賞するのが最適

映画『マダム・イン・ニューヨーク』予告編 これまで5本程度見てきたインド映画。 通して感じることは「ストレート」だということである。 起承転結はあるのだが、本当に真っ当に起承転結。大どんでん返しはない。期待を裏切られないという点で、安心して観…

映画感想:『ビフォア・ミッドナイト』でロマンを語ることの意味を知る

映画『ビフォア・ミッドナイト』予告編ビフォアシリーズで1番良かった。全2作が半ば夢の話なのであれば、本作は現実の話。ジェシー、セリーヌは共に年を取っており40代。2人は夫婦となっており、双子の娘がいる。生活を共にしていると、どうしても話す内容も…

映画感想:『ビフォアサンセット』の非合理的な2人

Before Sunset - Original Theatrical Trailer「運命」という概念を持つのは人間だけだろう。 イルカは運命を信じるだろうか。オスイルカは、大海原でかつて出会ったメスイルカを覚えているだろうか。 たとえ覚えていたとしても、今ある自分の生活を捨ててま…

映画感想:『ローガン』はアンチヒーロー映画

www.youtube.com 映画の予告動画はとても重要だ。 鑑賞者は、映画館で、TVCMで、Youtubeで、予告動画を見て「その映画を鑑賞すべきか」を判断する。その点『ローガン』は素晴らしい。予告に使われている曲は、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)の”Hurt”と…

映画感想:『灼熱の魂』は悲劇ではない

『灼熱の魂』予告ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督はなんて映画を撮るんだ。観終わった後にはそう感じざるを得ない強烈な作品。 カナダに住む双子ジャンヌ、シモンの母ナワルが亡くなり、公証人が遺言を2人に伝える。 そこに隠された謎(父と兄の行方)、すなわち母…

映画感想:『メッセージ』は未来の話ではない

映画『メッセージ』予告 本作『メッセージ(原題:Arrival)』はSF映画である。 しかしSF映画(ここでは宇宙映画)と一言で言っても、様々なジャンルが存在する。1つは純粋に「宇宙」をテーマにした作品である。 例えば『2001年宇宙の旅』や『ゼロ・グラビテ…

映画感想:『インファナル・アフェアIII 終極無間』で仏教の残酷さを知る

『インファナル・アフェアIII 終極無間』は『インファナル・アフェア 無間序曲』に次ぐ「インファナル・アフェア」、三部作の三作品目。 シリーズの完結編である。『インファナル・アフェア』の前後数ヶ月を中心に話は展開する。 ヤンは組織の中でどういう立…

映画感想:『プリズナーズ』は、「囚われることの無意味さ」を世に問うている

映画『プリズナーズ』予告編2017年5月20日の今、公開中の『メッセージ』に関するインタビューで、ポスターにもある宇宙船のデザインは「ばかうけだよ」と発言しているドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。 もちろん誰かの入れ知恵からくる監督のジョークだろうが、彼…

映画感想:『インファナル・アフェア 無間序曲』は香港返還の抒情詩

『インファナル・アフェア 無間序曲』は「インファナル・アフェア」、三部作の二作品目。 ゴッドファーザーと同じく、間の二作品目は、過去の話が中心になっている。時代は一作品目である『インファナルアフェア』の2000年代初頭から遡り、香港返還(1997年…

映画感想:『インファナル・アフェア』はアジア映画最高峰

Infernal Affairs - Official Trailer [HD]アジア映画というと、ジャーキー・チェンが「アチョー!」と言っていたり、 あるいは「少林サッカー」のやりすぎなCGのイメージだったり、あまり繊細な作品のイメージがなかった。本作には驚いた。マフィアに潜入す…

映画感想:『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』と『俺の全て』

Before Sunrise - Original Theatrical Trailer 燃えるようなアバンチュール うすい胸を焦がす これが俺の全て スピッツの名曲『俺のすべて』の歌詞の一部だ。「アバンチュール」という言葉は、既に日本では死語となってしまっているが、本来はフランス語で…